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AI × 会計

経理を、「判断しやすい形」へ

会計ソフトとAIを組み合わせ、自動化できる部分を活かしながら、手作業や確認が残る部分も迷わず進められる形にする。自分の経理を題材に、その方法を探っています。

BEFORE|使いこなせず、手入力に戻ってしまった

私は以前にも、弥生の「スマート取引取込」を使って、銀行口座やクレジットカードの取引を自動で取り込もうとしたことがありました。

当時は、取り込んだあとの修正が多く、どこをどう直せばよいのかも分かりませんでした。自動化するための機能を使っているはずなのに、かえって作業が複雑になり、結局、手入力に戻ってしまいました。

それ以来、経理は「やらなければならないけれど、できれば向き合いたくないもの」になっていました。

経理の負担には、入力作業の量に加えて、判断の迷いも大きく関係していました。

この取引はどのように処理するのか。以前と同じ処理でよいのか。どこまで自分で判断し、何を確認する必要があるのか。

一つひとつの判断に確信が持てず、「何が分からないのかも、よく分からない」状態になっていたことが、経理を重くしていました。

DISCOVER|取り込めても、そこで完了するとは限らない

あらためて現在のスマート取引取込を使ってみると、以前よりも機能が改善されていました。

一度ルールを決めれば、同じ種類の取引を継続して取り込むことができます。仕訳の基本部分が自動で作られるため、その効果はとても大きなものでした。

一方、取引を正しく取り込めても、そこで作業が完了するとは限りません。

例えば、仕訳の内容は同じでも、摘要に記録する「何月分」という情報は毎回変わります。こうした取引ごとに異なる情報は、一律のルールで取り込むことが難しく、取り込んだあとに手作業で補う必要があります。

実際の経理には、次の三つが混在していました。

  • ルールを決めれば自動化できる部分
  • 取引ごとに変わる情報を手作業で補う部分
  • 状況に応じて確認や判断が必要になる部分

自動化は、繰り返し作業を大きく減らしてくれます。そのうえで、毎回変わる情報の入力や、人による確認をどのように進めやすくするかを考える必要がありました。

証憑管理についても、必要な作業は事業者によって変わります。

自分で請求書の形式や発行方法を選べる場合は、会計ソフトと連携する機能を使うことで、発行から保存、会計処理まで自動化できる範囲が広がる可能性があります。

私のように、取引先から指定された形式を使う場合は、会計ソフトとの連携を前提に請求書を作ることができません。内容を確認してアップロードし、必要な項目を設定する作業が残ります。

そのほかの証憑についても、何を会計ソフトへアップロードし、何を別に保管しておけばよいのか、必要な項目が満たされているかを確認する必要があります。

自動化できる範囲は、会計ソフトの機能に加えて、使っている書類の形式、取引先との関係、現在の業務の流れによっても変わります。

この実践から見えてきたのは、機能を一律に当てはめるのではなく、その人の状況に応じて、何をする必要があるのかを明確にすることの大切さでした。

STRUCTURE|自動化・手作業・確認を整理する

まず行ったのは、前年度の仕訳データを使って、自分の取引にどのようなパターンがあるのかを調べることでした。

会計データには、取引先名や口座情報など、そのまま外部のAIへ渡せない情報が含まれています。そこで、分析に必要な情報を残しながら、個人名や取引先名、口座番号などをローカル環境で置換・削除できるマスキングツールを作りました。

マスキングしたデータをAIで整理し、繰り返し発生している取引や過去の処理パターンを抽出します。その結果をそのまま採用するのではなく、弥生の画面や元の記録と照らし合わせ、実際に使えるルールかどうかを確かめていきます。

AIと会計ソフトを使った整理の流れ

守る

会計データに含まれる固有名詞や番号をマスキングする

見つける

前年度の仕訳から、繰り返し現れる取引パターンを抽出する

分ける

自動化できる部分、変わる情報を補う部分、確認や判断が必要な部分に分ける

確かめる

弥生の画面や元の記録、必要に応じて公的な情報や専門家への確認によって検証する

残す

確認した処理や注意点をルールとして記録し、次の取引に活かす

目指しているのは、使える自動化をきちんと活かしながら、残る作業も進めやすくすることです。

  • 自動化できる部分は、会計ソフトの機能を使って処理する
  • 毎回変わる情報は、どこに何を補うのかを明確にする
  • 確認や判断が必要な部分は、調べることや確認先を整理する
  • 一度確かめたことは、次回に使えるルールとして残す

AIは、取引のパターンを抽出するだけでなく、手作業が残る場所や確認すべき項目を洗い出し、「次に何をすればよいのか」を見えるようにするためにも使えます。

CHANGE|次に何を確かめればよいかが見えてきた

今回もっとも大きかったのは、「次に何を確かめれば先へ進めるのか」が見えるようになったことでした。疑問が残っていても、確認すべきことが分かれば、作業を先へ進められます。

AIと対話しながら情報を整理することで、次の点を切り分けられるようになりました。

  • どの取引で判断に迷っているのか
  • どの情報を手作業で補う必要があるのか
  • どこまで会計ソフトで自動化できるのか
  • 何を自分で調べる必要があるのか
  • どの段階で専門家へ確認すべきなのか

「何が分からないのか分からない」という状態から、「ここを確かめれば先へ進める」という状態へ変わったことで、経理作業に対する心理的な負担が軽くなりました。

さらに、手作業や迷いが生じる場所を整理したことで、今後どこを改善すればよいのかも見えてきました。

目の前の経理を進めやすくするだけでなく、作業の流れや判断ルールを少しずつ改善していけるようになったことも、この実践から得られた成果です。

NEXT|その人に必要な作業を、見えるようにする

この第一段階では、自分の経理を題材に、自動化できる部分、手作業が残る部分、確認や判断が必要な部分を整理しました。

今後は、証憑ごとの具体的な要件や、利用する会計ソフト・プロダクトによる違いをさらに調べながら、AIを使った整理と判断支援をどこまで仕組みにできるかを検証していきます。

自動化できる部分は、自動化する。取引ごとに変わる情報は、迷わず補えるようにする。確認が必要な部分は、何をいつまでに確かめればよいのかを見えるようにする。

この三つを組み合わせることで、経理はもう少し進めやすいものになるはずです。

将来的には、弥生を使っているものの、どこから手をつければよいか分からず止まっている個人事業主に向けて、この実践から得た方法を活かしたいと考えています。

記帳を代行したり、税務上の判断を引き受けたりするのではなく、現在の業務の流れを一緒に整理し、何を取り込み、何を手で補い、何を確認する必要があるのかを明らかにする。そして、本人が自分で経理を進められる状態をつくる。

AIと会計ソフトを、単なる自動化のためだけに使うのではなく、自分で判断し、前へ進むための仕組みとして活用すること。

それが、このプロジェクトで目指していることです。

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